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「低コスト・高耐衝撃セルロース構造材料の研究開発」がNEDO先導研究プログラムに採択
~トヨタ紡織が主導し、産学連携で社会実装へ向け本格始動~
トヨタ紡織株式会社(本社:愛知県刈谷市、社長:白柳 正義)、日本製紙株式会社(本社:東京都千代田区、社長:瀬邊 明)、国立大学法人京都大学(所在地:京都市左京区、総長:湊 長博)、地方独立行政法人京都市産業技術研究所(所在地:京都市下京区、理事長:西本 清一)の4者は、このたび国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下 NEDO)のNEDO先導研究プログラム※に、「低コスト・高耐衝撃セルロース構造材料の研究開発」が採択されたことを受け、共同研究を本格的にスタートします。
この研究は、木材などから得られる植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)を活用した低コスト、高耐衝撃、軽量・高剛性かつカーボンニュートラルな構造材料の実用化を目指すものであり、早期社会実装の実現につながるとともに、次期大型国家プロジェクトへの橋渡しとなる先導的な取り組みです。
※脱炭素社会の実現や新産業の創出に向け、2040年以降(先導研究開始から15年以上先)の実用化・社会実装を見据えた革新的な技術シーズを発掘・育成し、国家プロジェクトを含む産学連携体制による共同研究等につなげていくことを目的としたプログラム。
1.研究開発の背景と課題
CNFは大気中のCO₂を吸収・固定し、軽量かつ高剛性という特性を備えることから地球環境に優しい素材として注目されており、脱炭素社会のキー・マテリアルと位置づけられています。一方で、製造コストの高さや耐衝撃特性、部品製造時の成形加工性における課題があり、自動車部品を含めた構造部材への実用化が遅れています。
2.研究開発の概要と革新性
本プロジェクトでは、自動車部品メーカーであるトヨタ紡織がリーダーとなり、CNFの原料であるパルプに対する製造技術を有する日本製紙、CNFの樹脂複合化における学術的知見を有する京都大学、樹脂複合材の成形プロセス開発を得意とする京都市産業技術研究所が連携し、開発を進めることにより、課題を解決するための技術革新に挑みます。
[本プロジェクトの革新性]
1) 自動車部品メーカーが、ユーザー視点で社会実装を見据え研究開発全体をリード
2) 世界トップクラスの技術の融合
・京都大学の「セルロースナノファイバー強化樹脂材料製造技術(京都プロセス)」
・トヨタ紡織の「ナノレベル耐衝撃特性向上技術」
3) 材料開発から、材料に適した工法の開発、部品としての実証検証まで行う一気通貫型の技術開発
また、今回構築する基盤技術は、自動車分野だけでなく、家電、建築資材、産業機械など多様な分野への応用が期待される素材の技術革新でもあります。今後、有識者を交えた研究推進委員会を設置し、戦略的に研究開発を推進することにより、早期社会実装、次期大型国家プロジェクトへの発展を目指します。
【関係者コメント】
トヨタ紡織株式会社 材料技術開発部 プリンシパルエキスパート 鬼頭 雅征
(NEDO先導研究プログラム・プロジェクトリーダー)
資源制約を抱える日本において、再生可能資源であるセルロースを高度利用できる技術を確立することは、産業技術開発に留まらず、"世のため、人のため"につながると確信しています。本プロジェクトリーダーとして研究開発を主導し、コストや耐衝撃特性の課題を乗り越え、これまで誰も実現できなかった構造材料用途でのCNFの早期社会実装を世界に先駆け実現させたいと思います。
日本製紙株式会社 富士革新素材研究所 所長 畠田 利彦
日本製紙グループは「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」として、再生可能な木質資源を多段階で活用する事業の展開を進めています。本プロジェクトにて、木質資源であるCNFを用いた自動車部材を中心とする構造材料への適用検討を通じて、CNFの工業製品への可能性と展開を拡大し、サプライチェーンにおける社会的責任を高め、カーボンニュートラル社会の早期実現を目指します。
京都大学 生存圏研究所 特任教授 矢野 浩之
脱炭素に貢献する革新的バイオ素材、CNF材料は、未だ自動車部品や家電等のボリュームゾーンでの実用化例がありません。その壁となっているコスト、耐衝撃特性を、自動車部品メーカーのリードにより材料・工法・構造設計の「三位一体」で越えようとする本プロジェクトは、カーボンニュートラル2050を見据えた世界で初めての異分野垂直連携によるチャレンジングな取り組みです。その一翼を担えることを嬉しく思います。
京都市産業技術研究所 産業技術支援センター 研究主幹 仙波 健
プラスチックは、軽量化や断熱による省エネ効果を通じて、CO₂排出量削減に貢献する素材です。本プロジェクトでは、CNFとプラスチックを複合化することで、さらなる環境性能と高い耐衝撃性を併せ持つプラスチック材料の開発と社会実装を目指します。裾野の広い自動車分野、家電、建築資材などへの展開を通じて、日本のプラスチック産業の発展に寄与するとともに、中小企業にも広く活用される成果を創出します。
【ご参考】本プロジェクトの実施体制
【本件連絡先】
トヨタ紡織株式会社 総務部 広報室
Tel:0566-26-0301 E-mail: yusuke.ashino@toyota-boshoku.com
日本製紙株式会社 総務・人事本部 広報室
Tel:03-6665-1455 E-mail:pr@nipponpapergroup.com
国立大学法人京都大学 生存圏研究所 生物機能材料分野
Tel:0774-38-3669 E-mail:yano.hiroyuki.86z@st.kyoto-u.ac.jp
地方独立行政法人京都市産業技術研究所 知恵産業融合センター
Tel:075-326-6100 E-mail:info_chie@tc-kyoto.or.jp