トヨタ紡織のMOOX-RIDEシステムが名古屋を走るSRTへ搭載!担当者インタビュー
- ※本記事に掲載しているSRTの画像は、一部開発時点のものを使用しているため、実際の仕様と異なる場合がございます。
名古屋で運行するSRTにトヨタ紡織のMOOX-RIDEシステムが搭載
名古屋市では2026年2月より、連接バスを活用した新しい路面公共交通システム「SRT」(Smart Roadway Transit)の運行を開始しています。
SRTの運行には、増加する訪日客の利便性向上に加え、名古屋の魅力発信・回遊性の向上という狙いがあります。
そのSRTへ、トヨタ紡織が開発した「MOOX-RIDE」システムが導入されています。
実際に乗車して体験してみると、外の景色とMOOX-RIDEの映像が重なり、名古屋市を訪れてSRTに乗車すれば、観光ガイド付きのバスに乗っているかのように周遊することができ、楽しみながら景色を見られる、SRTならではの体験ができます。
その場所ならではの新しいデジタルコンテンツ体験を提供するMOOX-RIDEによって、SRTがどういった「移動を楽しむ空間」になっているか、トヨタ紡織の担当者の声として、このプロジェクトの推進メンバーと、MOOX-RIDEの開発メンバーのインタビューをご紹介します。
MOOX-RIDEについて詳しくはこちら:
https://www.toyota-boshoku.com/jp/teambreakthrough/technology/009/
MOOX-RIDE搭載の背景 -担当者インタビュー①-
MOOX-RIDEをSRTへ搭載するプロジェクトの「推進メンバー」にお話を伺いました。
・山内 克仁さん(画像上段の左)
・福田 ちあきさん(画像上段の右)
■営業企画部:
・岩月 優幸さん(画像下段の左)
・藤根 賢さん(画像下段の中)
・柳本 由貴さん(画像下段の右)
SRTへMOOX-RIDEが搭載されることになったきっかけは?
山内さん:
これまでMOOX-RIDEシステムは何度か実証実験を行ってきており、
「その場を走ることでしか感じることができない新しいデジタルコンテンツ体験」というMOOX-RIDEシステムのコンセプトがSRTと合致し今回の搭載に繋がりました。
今回の活動における、皆さんの体制・役割は?
山内さん:
経営企画部では、私と福田さんが中心となって今回のSRTへの搭載プロジェクト自体の推進計画や今後の事業化に向けた計画を練っていました。
その計画に対して、パートナー探索などを営業企画部と協力して行なっていたという体制になります。
岩月さん:
これまで山内さんがMOOX-RIDEに対して思い入れを持って取り組んでこられており、名古屋市さんとプロジェクトを進めるうえで、当初はMOOX-RIDEを搭載することにフォーカスされていました。
ただ、せっかく室内空間に携わらせていただけるのであれば、営業企画部としても参画し、藤根さん、柳本さんとともに産官学連携なども視野に入れた、新たな提案を推進していこうと考えていました。
山内さん:
これまでMOOX-RIDEに携わる中で、“これをどのような事業にしていくか”が大きな課題でした。
岩月さんたちのご協力もいただき、新しいMOOX-RIDEの在り方の検討を進めることができました。
プロジェクトを推進するにあたり印象に残っていることは?
山内さん:
社内の協力体制をどう築くか、という部分は特に時間を使いました。
MOOX-RIDE自体もまだまだ新しい製品で、今までのトヨタ紡織がメインとしてきた事業とは違うビジネスモデルになります。
システムの理解も必要ですし、今後の進め方も含め、根気よく周知活動などを行っていきました。
福田さん:
SRTへの搭載にあたって、この取り組みにご賛同いただける企業様を見つけることがまずは大きな壁でした。
ただ、活動をしながら印象深かったのは、中部地方の企業様はこの地域が好きな方々が多く、積極的に地元を盛り上げようとされている、ということでした。
その想いを大切にしながら、新しい関係を築いていきました。
藤根さん:
新しいビジネスだからこそ、わからないことがあっても社内に前例が無く、どこに相談しようか、と悩むことは多かったですね。
岩月さん:
これまでトヨタ紡織はB to Bのビジネスがメインで、今回のような活動はまだまだ不慣れということもあり、進め方をよく迷いました。
まずはトヨタ紡織という会社のPR活動の一環としても活用しつつ、軌道に乗せられるよう、取り組みを進めました。このプロジェクトでも行政の方との関わり方や品質基準などの新たなルールを覚えながら推進しています。
柳本さん:
そもそもの契約のやり方や取り決めなども、社内の各部署と協力しながらイチから学びました。このプロジェクトを進めるにあたっての足固めとして、契約周りなどは重要なので慎重に進めていきました。
今回のプロジェクトの中で嬉しかったことはありますか?
山内さん:
いろいろと活動を続けていると、トヨタ紡織が新しいことをやっている、ということを知って、応援いただける企業様もいらっしゃいました。相談できるつながりができてきた、というのはとても嬉しいことです。
また、中部地方の企業様と関わる中で、ビジネスの進め方のルールも学ぶことができ、自社だけでこうした活動を推進できたことも1つの価値になったと思っています。
福田さん:
社内でも応援してくれるファンのような方々ができてきた、というのはすごくありがたいです。
会社を盛り上げることにも貢献できたのでは、と思っています。
岩月さん:
まずは皆さんに乗車いただけるところまでこぎつけたというのが嬉しいです。
ぜひ乗っていただきたいと思います!
SRTへのMOOX-RIDE実装に向けて -担当者インタビュー②-
続いて、MOOX-RIDEの「開発メンバー」にもお話を伺いました。
・佐藤 光さん(画像上段の左)
・芦沢 宏樹さん(画像上段の右)
・原口 大輝さん(画像下段の左)
・アン ウンジさん(画像下段の中)
・ユン シヨンさん(画像下段の右)
今回の活動における、皆さんの体制・役割を教えてください
佐藤さん:
プロジェクト統括が私で、
MOOX-RIDEのシステム担当が芦沢さん、車両搭載などハード面の担当が原口さん、
デザインや映像のディレクション・制作担当がシヨンさんとウンジさん、という体制でした。
私は2020年の実証実験のころからMOOX-RIDEに携わっています。
MOOX-RIDEに携わっている歴としては芦沢さんが一番長いですね。
芦沢さん:
そうですね、このメンバーの中だと、私がMOOX-RIDEには一番長く携わっています。
2018年ごろからなので、入社以来ずっと約8年近く担当しています。
原口さん:
私は2022年からで、MOOX-RIDEシステムを搭載した車両を公道走行できる状態にするというところから携わっていました。
佐藤さん:
シヨンさんは入社2年目、ウンジさんは入社1年目なんですが、元々韓国からインターンシップでトヨタ紡織に来てくれて、そのまま入社し、継続して携わっていただいています。
今回SRTに搭載されたMOOX-RIDEはこれまでの実証実験とどういったところが違いますか?
芦沢さん:
SRTとしての実装にあたり、システムの安定性などを意識しています。
社会実装に耐えられるか、という点では、トヨタ紡織としても高い基準を設け何度も検証したうえで搭載しました。
佐藤さん:
MOOX-RIDEシステムとしては実証実験で別の機能も搭載していましたが、
今回のSRTという新たな路面公共交通システム、そしてニーズに合わせて、映像と音響での演出にフォーカスしています。
ウンジさん:
今回のSRTへの搭載には、プロジェクトの最初から最後まで携わることができ、分野を跨いでの協業もしていたので、とても良い経験になりました。
今回の取り組みで苦労されたことや印象に残っていることはありますか?
佐藤さん:
MOOX-RIDEはこれまで、コンテンツへの没入体験を重視して取り組んできましたが、
今回のSRTは車窓から見える景色とコンテンツをかけ合わせてどう良いものにできるか、というのが難しい点でした。
通常の窓とディスプレイが並ぶ中で、何を映したら乗客が楽しめるのか、景色を邪魔しないか、というバランスを検討しました。また、連節バスというものも前例が多くあるわけではないので、車両の特性による制約なども考えながら進めていきました。
芦沢さん:
SRTの車両自体ができてから、実際のコースで試験走行を行っていくのですが、そこへ乗車しながら我々もシステムの検証をしていました。
1日中、朝から晩まで走っているバスの中で仕事をするというのもなかなかない経験で、それを1か月ほど続けたのは良い思い出です。
前例が少ない車両だったので、何度もやり直しながら、システム側とハード側合わせて連携・検証していきました。
佐藤さん:
渋滞や信号による停止など交通状況によって変化する乗車時間の考慮も難しかった点ですね。
芦沢さん:
常に変化する乗車時間に合わせてコンテンツの尺の調整が必要で、位置情報に連動した「まちの情報」コンテンツの発信の合間で、シヨンさんやウンジさんが作ってくれた映像コンテンツを入れることで途切れないコンテンツ体験を提供できています。
原口さん:
ハード面だと、車窓の景色とコンテンツの映りのバランスをとるのが一番難しかったです。
今回の車両の形式だと、早い時期から自由に公道を走って検証するのは難しいため、まずは工場で何度も試行錯誤していました。
ただ、やはり実際に公道を走ってみると、日光の当たり方や走行コースによって違いが出てくるので、思ったより暗くて景色が見えないことや、明るすぎてコンテンツが見えないなど、さまざまな課題が見えてきました。
また、車両の特性によって振動の発生の仕方が違うため、振動の特性でうまく位置情報のシステムが動作しない、などもあり、そのあたりの調整も時間をかけましたね。
シヨンさん:
コンテンツ作りにおいては、乗客は日本人以外も含め老若男女ということを考えると、
どのような表現が良いか、さまざまな案を検討しました。
他の方のお話と重なるところはありますが、車両上での調整事項も多かったです。
見ていて楽しい映像ということも重要なのですが、作った映像を大きな窓で映してみると、乗客をちょっと驚かせてしまうかも、というものもあり、実車で確認しながら改善していきました。
ウンジさん:
実際の映像の見えやすさも何度も調整しました。
当初予定していたデザインだと、景色が見えにくくなることが分かったので、
急遽デザイン変更し、グラスモーフィズム(ガラスのような半透明・ぼかし効果を用いたUIデザイン手法)を取り入れて、視認性が高まるよう作り込んでいきました。
また、それを基にデザインルールも作成し、パートナーとなる映像制作会社とも共有しながらコンテンツ作りを進めました。
今回のSRTの注目ポイントは何ですか?
佐藤さん:
連節バスで、かつMOOX-RIDEのようなシステムが搭載されている乗り物というのはなかなか他にはないと思っています。
SRTはこれまで名古屋にはなかった移動体験として、ワクワクするものだと思うので、ぜひ乗って楽しんでほしいですね。
芦沢さん:
MOOX-RIDEとしても大きな一歩だったので、
今後もぜひ長く乗っていただきたいと思っています。
佐藤さん:
MOOX-RIDEもこれを皮切りに、いろいろなモビリティーへの搭載を目指したいですね。
ぜひSRTへご乗車いただき、MOOX-RIDEもご体感ください!
そして、MOOX-RIDEはまだまだ進化を続けていきます。
今後もお楽しみに!