これがトヨタ紡織流の
ダイバーシティ&インクルージョン
専門組織「ダイバーシティ&インクルージョングループ」を立ち上げて活動中
「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」という言葉をご存知ですか?「ダイバーシティ」とは多様性を意味し、性別、年齢、国籍、宗教、価値観などが異なる人々が集まっている状態のこと。日常生活の中のさまざまな場面で見聞きすることも増えてきましたね。
一方の「インクルージョン」はどうですか?初めて聞く方もいるのではないでしょうか。日本語では「包括・受容」と訳されます。多様な人材が集まり、個々の異なる属性が受け入れられ、それぞれの経験や能力、考え方を尊重し合っている状態のことを言います。
実は、会社にとっても、D&Iの重要性は年々高まっています。労働人口の減少や働き方の多様化、企業のグローバル化への対応だけではなく、異なるバックグラウンドや経験を持つ人々が能力や強みを生かすことで、より広範で創造的なアイデアが生まれると言われているからです。
トヨタ紡織の人材戦略部には「ダイバーシティ&インクルージョングループ」という組織があります。グループのミッションは、「働く誰もが能力を最大限に発揮でき、多様な価値観や意見を受け入れる企業風土を醸成していくこと」。グループ長であるセバスチャン・デュソーは、D&Iに取り組む目的と効果を次のように表現しています。
トヨタ紡織には、さまざまなバックグラウンドを持つ社員がいます。そして、それぞれの価値観を受け入れ、尊重する風土もあります。そのため、一人ひとりが自由かっ達にアイデアを出し、発言できる環境であると考えています。
しかし、自分の意見を言いにくく、孤独を感じている人も中にはいるのでは、と感じていました。そういったメンバーの意見や課題を把握するのは、簡単なことではありません。そこで、社員の活動グループを通して、発言がしにくい方に対しても会社側から積極的に働きかけ、会社の方針や活動に彼らの意見を反映させていこうとしています。この取り組みによって、新しく、かつ多様なアイデアが生まれると期待しています。
すべての社員が、それぞれの経験や強みを生かして働くことができれば、すべての社員がやりがいを感じられるのでは、と考えています。
多様な人材が集まることにより、より多くの視点を持ち、新たな価値を生むことで、会社の競争力向上につなげていきます。
D&Iに取り組んでいる企業は取り組んでいない企業に比べて、変化への対応力が1.8倍、業界のイノベーションリーダーになる可能性が1.7倍高くなり、また、イノベーションによる収益の増加などが生まれるという調査結果もあります。
移動空間の新価値創造を主導する「インテリアスペースクリエイター」を目指す当社グループにとって、全社員でD&Iを推進することはイノベーションを起こす礎なのです。
多様な人材の確保 + 風通しのよい職場 → イノベーション
当社グループのD&I推進のポイントは2つあります。
1つめは、「多様な人材の確保」。これまでは、女性、若手、障がい者、シニア、外国人といった外見の特徴から認識される多様性に着目しがちでしたが、外見だけではわからない内面的な部分、つまりさまざまな価値観や経験などを持つ人材が当社に魅力を感じ集まっている状態にすることです。さらに、多様な人材が集まることで得られる「考え方の多様性」を重視したいと思っています。女性ならでは、障がい者ならでは、その宗教ならでは、その人の経験ならではなど、真に多様な視点で考えると、今まで浮上してこなかった社会や会社の課題が発見されることがあるからです。5万人の社員が持つ“一人ひとり”のものの見方や考え方を生かそうとしているのです。
2つめは、「風通しのよい職場」であることです。TB Wayには、「常にオープンでグローバルな意識を持ち、多様な価値観を尊重し受け入れる」とあります。これは要するに、公正性・公平性があり、自分の考えや気持ちを安心して発言でき、自分の居場所や存在意義を見出せることです。当社は、社員がいきいきとやりがいを感じながら働き、能力を発揮し成長することができる、開かれた職場づくりを目指しています。
多様な人材が集まる風通しのよい職場では、社員同士が関わりの中で成長し、既成概念にとらわれない発想をすることで、イノベーションを起こすことができると信じています。
トヨタ紡織のD&Iによるイノベーション創出の考え方
ダイバーシティ&インクルージョングループで進めている取り組み事例(一部計画を含む)
- ENRG(Employee Network Resource Group)の創設
- 育児休職から復帰する前の社員と上司セミナー
- 全社員向けLGBTQガイドブックの発行
- 「D&I Week」の実施
次に、全社横断的かつグローバルに取り組んでいる活動例を紹介します。
D&Iの推進エネルギー「ENRG活動」
数あるD&I活動のうち、2022年度から取り組んでいるのが「ENRG活動」です。社員(Employee)・ネットワーク(Network)・リソース(Resource)・グループ(Group)の略称で、「エナジーグループ」と呼んでいます。これは、D&Iの推進エネルギーとも言えます。ENRGは、有志の社員で構成され、働きやすい職場環境にするために、課題を洗い出し、必要な施策の実施に向け、経営層へ提言しています。特に、少数派になりうる社員や孤立しかねない社員が抱える問題を知り、意見・提案できる場を提供するということも重視しているポイントです。ダイバーシティ&インクルージョングループは、ENRGが企画立案し、行動を起こすためのサポートを行っています。
ENRGでは、これまでに専門家による講演会、各種相談会やトヨタグループ各社との交流会などを開催し、課題や解決策など意見交換をしてきました。イベントを通じて社員同士がつながり、コミュニケーションが深まって、よりよい気づきとアイデアが生まれています。さらに、内定式や入社式でも取り組みの紹介をするなど、新しく当社の社員になった人たちにも、当社のD&Iの考え方をしっかり説明し、活動の輪を広げています。今後は、社外のD&Iイベントへの参加やSNSを活用した情報発信、社外のさまざまな組織と連携した活動なども計画しています。
2024年2月現在、ENRG活動を推進するワーキンググループは6つあり、日本国内には次の5つがあります。
各グループの名称と紹介
ここで、SHINEの事例を紹介します。SHINEには、「社員一人ひとりが輝いてほしい」という意味が込められています。実はENRG活動が始まる前の2017年度から「かがやきワーキング」として活動をしてきており、仕事と家庭の両立のための施策提言などを行ってきました。SHINEとしての活動を開始してからは、当社の女性社外取締役との懇談会や経営層との意見交換会を実施し、当社ではまだまだ少数派の女性管理職の生の声を聞いてもらう機会をつくりました。また、ENRGに関する社内イベントを中心となって企画し、社内へのENRG活動の浸透も図っています。
海外では、トヨタ紡織ヨーロッパ(TBEU)でGender Equity(ジェンダー平等)をテーマにしたグループが立ち上がり、EU諸国のガイドラインに沿って、アクションプランを作成しました。まずはTBEUの全女性社員とのミーティングを行い、職場で感じた課題について自由に意見交換しました。課題に対する対応策、研修やその他活動を企画・実施し、TBEUでのジェンダー平等の啓発、向上につなげていきます。今後は中国やアジア地域でも活動を予定しています。