砂漠化をとめたい。サステナブルな未来を見据えた植樹チャレンジ

砂漠って、遠い国の話?

気候変動、水不足、資源枯渇、生物多様性の危機。そんなキーワードを見るたびに、地球の資源をいつか使い果たしてしまう。そんな未来が来るのではないかと、感じてしまいます。森林も、その資源のひとつ。森林は生物の多様性を保護する、重要な役割を果たします。しかし今、そんな森林が破壊され世界中で砂漠化が着実に進んでいるのです。

ところで、砂漠とは何か、説明できますか。どうして砂漠が増えるとよくないのでしょうか。砂漠は単に「砂の多いところ」というだけではなく、細かな粘土や土でできている砂漠、巨大な岩が多くある砂漠など、たくさんの種類があります。共通しているのは、極度に乾燥し、人間はもちろん、多くの植物も育つことができない地域だということ。「砂漠化が進む」とは、もともとは緑豊かだった土地が、こうした地域に変わってしまうことを意味します。世界で毎年、1,300万haもの森林が消失しています。これは、日本の国土面積の約1/3に相当します。
地球の人口は増加しているのに、人間が住めない地域が増えたら?……それは、とても困りますよね。

砂漠化の要因は大きく分けて2つあります。干ばつなどの気候的なものと、人口の急増や家畜の過放牧などによる人為的なものです。このような砂漠化は今、世界のいたるところで問題となっています。例えば中国でも、深刻な砂漠化によって土地が荒廃し植生が徐々に貧弱なものへと変化する現象が見られ、1950年代から国を上げて砂漠化防止に取り組んでいます。私たちトヨタ紡織グループも、自分たちが拠点を置くこの国の持続可能性のためにできることをする義務があると考え、砂漠化防止に貢献する植樹活動を2013年から続けています。

植樹前
植樹前
植樹6年後
植樹6年後

子どもたちが笑顔で暮らせる地球環境とは

私たちは2016年に「2050年環境ビジョン」という、その名の通り2050年の世界を見据えたチャレンジ目標を立てました。「すべてのステークホルダーのみなさまと一致団結して、子どもたちが笑顔で暮らせる持続可能な地球環境を目指す」をビジョンに、子どもたちが笑顔で暮らせる地球環境とはどんな環境なのかを常に考え、私たちにできることを探し、取り組んでいます。

この2050年環境ビジョンのテーマの1つに、「森づくり活動 132万本植樹にチャレンジ」があります。私たちの生活や文化は生物多様性がもたらす恵みによって支えられてきました。固有種が生息する地域や森林の保護、生息地の復元は、生物多様性の恩恵によって成り立ってきた生活や文化を、次の世代へつなげていくことにつながります。

トヨタ紡織グループは世界各地に拠点を持ち、約5万人の社員が所属しています。グローバルに広がるネットワークを活用して、生物多様性を次世代に残すことができないかと考え、環境ビジョンに取り組んでいます。

効果はすぐに目には見えないけれど

中国内蒙古(内モンゴル)自治区の最西部に位置する阿拉善(アルシャー)盟では、27万km²の土地に、巴丹吉林(バダインジャラン)砂漠、騰格里(トングリ)砂漠、鳥蘭布和(ウランプハ)砂漠があり、 93.5%が砂漠化しています。私たちは、アルシャー盟にある中国で4番目に広いトングリ砂漠で森づくりを実施しています。中国地域の社員のほか、取引先や日本からも延べ355人が参加し、2013~2020年までの8年間で、約58haに約8万本の苗木を植えました。

水が少なく風が強い内モンゴル。参加者は、さらさらと舞う砂、辺り一面に広がる砂漠を見て、とても植物が育つとは思えず不安を覚えます。そんな砂漠に苗木を植えるためには、砂が流れないよう固定する作業が必要です。溝を掘って苗木を固定するための乾燥した草を埋め、そこに苗木を植えます。これが思った以上の重労働。作業の後には参加者は疲労困ぱいですが、自分の植えた苗木が役に立つと思うと達成感や喜びもひとしお。中国緑化基金会の第三者監査報告書を発行し開示することで、砂漠化防止事業への関心や、参加者のモチベーションを高めるなどといった工夫もしています。

ただし、植樹は「植えたら終わり」ではありません。効果は3年ほどで出始めますが、自然のサイクルとして安定するまでには長い時間がかかります。植樹に参加したメンバーの世代だけの手に負えるサイクルではありません。次の世代、そのまた次の世代へ。この活動を受け継いでいかなくては、森づくりにはならないのです。

それでも私たちは、木を植える

植樹後、根が広がり、3年後にその周辺の約80m²の砂の移動を抑え、固砂(固定された砂漠)となります。砂が固定され、植被率(正方形の枠を緑化地に設定し、その枠内を植物が覆っている割合を示した数値)が35~40%の固定砂丘と言われる砂丘となると、そこからまた長い年月をかけ、最終的には普通の農作物や植物が生きられるような普通の土地になります。

これまでの当社グループの植樹の実績から、植樹81,200本×80m²≈650Haの砂漠が固定されたと言えます。
このような活動が評価され、2018年9月、豊田紡織(中国)は、中国国家林業和草原局より「生態中国貢献賞」を受賞、2019年には、中国緑化基金会より「ベスト貢献企業賞」を受賞しました。これは砂漠化防止を目的にトングリ砂漠で7年間続けてきた森づくり活動の継続性や社会への影響力が高く評価されたものです。
また中国では、2030年までにCO2排出量ピークアウトの実現、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。森づくりは、これらの実現にも貢献できると考えています。

森づくりは、時間がかかる地道な活動です。それでも私たちは、この活動を通じて環境問題に真正面から取り組むことで、「木を植える」こと以上の価値を見出しています。例えば、活動を通じて、地域事業体の一体感が醸成され、社員の環境意識の向上にもつながること。継続的な社会貢献活動によって地域から信頼され、必要とされる会社になること。森づくりは私たちにとってたくさんの価値を生み出しています。

中国以外にも、日本やタイ、ベトナム、トルコ、カナダなど、世界各地で植樹活動を実施しています。これからも、2050年環境ビジョンの目標の達成と、地域から必要とされる会社を目指し、引き続きチャレンジを続けていきます。

2050年までの累計植樹本数

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