技術開発

水素を活用した燃料供給システムで、カーボンニュートラルに貢献

脱炭素社会で注目される水素エネルギー

世界的に脱炭素への取り組みが加速する昨今。日本を含む150以上の国・地域では、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡をとり、全体としての排出を実質ゼロにすること。これを実現するには、CO2排出量の削減が重要です。そこで、新たなエネルギーとして「水素エネルギー」が注目されています。

水素エネルギーは、水素と酸素が結びつくことで発電します。発電時に排出されるのは水のみで、エネルギー使用時にCO2を排出することもありません。
また、水素エネルギーは、ほぼ無限につくり出すことができます。水素は、水をはじめ、石油や天然ガス、化学工場の副産物、下水、汚泥などの廃棄物まで、さまざまな物質を電気分解することで取り出せるからです。さらに、水などの物質を電気分解して水素にしておけば、必要な時・場所でエネルギーとして使うことができるので、貯蔵や輸送においても便利です。たとえば、太陽光発電で晴れの日につくった電気の一部を水素に変えておけば、曇りの日にその水素で電気をつくることができます。水素エネルギーは、発電量が不安定な自然エネルギーとの併用にも適しているのです。

これらの理由から、日本では国として水素エネルギーの活用を促進しており、自治体や企業で活用に取り組むケースも増えてきました。水素を燃料として動く燃料電池自動車(FCV)の燃料供給設備として、水素ステーションの設置も全国で進んでいます。トヨタは、2014年に燃料電池自動車「MIRAI」を発表し、2023年には「クラウン」のFCVモデルを発表しました。

トヨタ紡織の技術とノウハウを活かしたシステム開発

トヨタ紡織では、水素社会の到来に向けて、あらゆるモビリティの燃料供給に活用できる「ハイドロジェンパワーシステム」の開発に取り組んでいます。このシステムは、精密プレス技術や樹脂成形技術など、当社が長年にわたり培ってきたコア技術が織り込まれたものです。さらに、量産化するために、「MIRAI」に採用されている「FCセパレータ」や「エアフィルター」といった製品の技術・ノウハウを活かしています。

ハイドロジェンパワーシステム

トヨタ紡織の技術とノウハウを活かしたシステム開発

ハイドロジェンパワーシステムの特長は、高度な熱マネジメントシステムによる冷却装置の削減と、瞬間的な入出力をハイレートなリチウムイオン電池(LiB)で補助する仕組みで、燃料電池自動車(FCV)の動力源である「燃料電池(FC)水冷スタック」の小型化を実現したことです。また、水素タンクはペットボトル大のサイズのものを使用し、扱いやすさを追求しています。これらにより、短時間で燃料の充填が可能なうえ、低圧(1MPa未満)のため取扱い免許不要です。
そのため、車だけでなく電動自転車などの小型モビリティでの活用が期待できます。また、水素タンクのエネルギー量が豊富なため、遠方への移動で長時間使用することも可能です。

ハイドロジェンパワーシステム

あらゆる小型モビリティにハイドロジェンパワーシステムを

今後は、シェアリングサービスや配送サービスなどのビジネスユースで使用される電動自転車から、医療現場で使用される電動車イスまで、あらゆる小型モビリティにハイドロジェンパワーシステムを搭載することを目指しています。
そのためには、よりいっそうシステム小型化とスタック高出力密度化を図ることが重要だと考えています。システム小型化においては、システム構成部品の一体化や機能統合での集約化に取り組んでいます。スタック高出力密度化においては、小型モビリティに適したFCスタックを1から設計し開発を進めていきます。この開発では、「MIRAI」の「FCセパレータ」や「エアフィルター」で培ったプレス成形技術が鍵になると考えています。
当社は、ハイドロジェンパワーシステムの開発をとおして、カーボンニュートラルに貢献していきます。

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