「環境にやさしい軽量化」を実現するバイオポリマーの開発

カーボンニュートラル実現に向けて注目されるバイオテクノロジー

日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年までに温室効果ガスの排出を“46%削減(2013年度比)”、2050年までに実質ゼロにする目標を掲げました。カーボンニュートラルを促進するために、バイオテクノロジーを利用した製品開発に注目が集まっています。
当社では、現在、バイオテクノロジー利用の一環として、バイオポリマーの開発を早急に進めています。バイオポリマーとは、植物油などのバイオマスを原料とし、微生物発酵プロセスによって生産されるポリマー(高分子化合物)です。CO2削減、車体の軽量化の観点から、多様な機能を有する樹脂の開発に着目し、非可食の植物由来化合物を原料とした新しいバイオポリマーの開発に成功しました。

トヨタ紡織が開発した新しいバイオポリマーの特長

従来のポリアミド樹脂(一般的にナイロンと呼ばれる)は、衝撃に弱く、また分子の内部に水が入り込みやすい(耐吸水性が低い)構造であることから、強度、寸法が変化しやすいという課題がありました。その課題を改善すべく、さまざまな反応条件で最適な分子構造になるようにスクリーニングを行った結果、新しいバイオポリマーが誕生しました。
しかし、ラボでの分子構造設計、分子制御により開発したバイオポリマーは、より大規模での製作を進めていくなかで、後工程コストの増加という問題が生じました。そのため、製造工程などを見直すことで、低コストでの生産を可能にしました。
新しいバイオポリマーは、当社が分子設計した特異な分子構造により、従来のポリアミド樹脂に比べて軽く、衝撃にも強いという特長があります。また、耐吸水性も改善されたほか、耐薬品性、透明性、リサイクル特性、安全性が向上しました。

バイオポリマーの成形性

バイオポリマーの成形性

バイオポリマーは、熱可塑性樹脂として良い成形性を有し、匂いもほとんど発生しません。

バイオポリマーの優位性

バイオポリマーの優位性

バイオポリマーは、高耐衝撃性、耐吸水性、そして耐薬品性に優れて環境にも優しく軽量化に貢献します。

バイオポリマーの物性

バイオポリマーの物性

バイオポリマーの吸水率

バイオポリマーの吸水率
  • ※ PP:ポリプロピレン PA:ポリアミド

実用可能性を高め、市場への導入を目指す

新しいバイオポリマーは、製造プロセスが複雑なため、いまだ大量生産が難しい製品です。
現在、プロセスの機械化や簡便な処理といった方法を取り入れ、改善を図っています。
今後も、引き続き製造プロセスを見直し、大量生産とコストダウンができる製造プロセスを検討していきます。
ヘルメットや、バイオポリマーを糸状に加工することで紡糸とするなど、用途を幅広く取り入れ、市場での導入を目指しており、将来的には、宇宙産業にも役立つ技術だと考えています。

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