技術開発

スタートアップ企業との協業で新しい風を吹き込む

社外の知見を取り入れ新規事業分野を開拓

これまでにない革新的な技術や発想を通じて社会にイノベーションをもたらすためには、ほかの企業や大学、官公庁といった社外の組織との協力が欠かせません。その中で、トヨタ紡織はコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVCと略称)を通じて、スタートアップ企業との技術開発を開始しました。社内外の豊富な知識や技術を共有していくことで、それぞれの組織の持つ強みを掛け合わせ、よりよいものをつくり出すことを目的としています。
投資という形での協力は、スタートアップ企業と投資側企業の双方にメリットがあります。スタートアップ企業にとっては、経営権を保ちながら、大企業の資本を活用し、意思決定や開発のスピードを維持できます。また、事業の実績や経験を積むことも可能です。一方、投資側企業にとっては、スタートアップ企業のイノベーティブなアイデア、技術、知識を取り入れ、革新的な商品開発や新規事業分野の創出を行うことができます。

従来事業の強化と新規事業分野への挑戦

トヨタ紡織のCVCは「2つの観点」と「3つの分野」に基づいて、どの企業に投資するかを判断しています。
観点の1つ目は「自社とのシナジーがあり、従来事業に新しい風を吹き込む知見、技術(知の深化)」につながる企業であるかどうかです。もう1つは「新規事業への拡大、イノベーション(知の探索)」ができるかどうかです。従来事業の強化と新規事業分野への挑戦を両立し、さらなる成長を続けます。
注力分野は、「持続可能な成長(ESG)」「車室空間」「ものづくり」の3つです。日本だけでなく海外の会社とも協業を進め、感動を生み出す移動空間の開発を加速させていきます。

投資先ポートフォリオ(2025年3月現在)

投資先ポートフォリオ

CVC活動を通じたオープンイノベーション

人の感じ方をデータ化する技術――モーションリブ株式会社、Diver-X株式会社

トヨタ紡織のCVCを通じた協業の例を紹介します。
従来事業とシナジーが高く「知の深化」につながる技術の1つに、人の感覚をデータ化する技術があります。
モーションリブ株式会社が生み出した遠隔触感伝送技術「リアルハプティクス®」は、タッチセラピーの優しくさする繊細な力加減をデータ化し、クラウド上に保存、さらにそれを機械で再現することができます。もともと、トヨタ紡織のものづくりの工程でも協業を進めておりましたが(リアルハプティクス技術)、CVC活動としても連携を深めています。この「リアルハプティクス®」の技術をシートや椅子に組み込むことで、まるでプロのセラピストが優しく肩をさするかのような体験ができるREMOTE TOUCH THERAPY(リモートタッチセラピー)シートを開発しました。

REMOTE TOUCH THERAPY(リモートタッチセラピー)シート
(人とクルマのテクノロジー展2023などで展示)

REMOTE TOUCH THERAPY(リモートタッチセラピー)シート(人とクルマのテクノロジー展2023などで展示)

また、Diver-X株式会社が開発したグローブは、手の位置や指の状態を感知し、XR上で誤差なく手指の動きを再現します。3Dデータ上の製品を手で触って確認するなど、活用の幅が広い技術として期待されています。

  • Extended Reality/Cross Realityの略で、現実の物理空間と仮想空間を組み合わせる技術
    「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などの先端技術の総称

幕張メッセ(千葉) Diver-Xブース参加など

Diver-Xブース参加
Diver-Xブース参加
Diver-Xブース参加

すべてのモビリティに「上質な時空間」を提供 ―― 株式会社ABAL、株式会社岩谷技研

新しい技術を生み出していく「知の探索」ではさまざまな事業に挑戦しています。
ここでは自動車の枠を飛び出し「上質な時空間」を「すべてのモビリティ」に提供するための取り組みを紹介します。例えば株式会社ABALとの協業では、車両位置情報に合わせたXRコンテンツの制作、移動空間用コンテンツ制作プラットフォーム開発を行っています。

車窓ARコンテンツ実証実験など

車窓ARコンテンツ実証実験

また、株式会社岩谷技研との取り組みでは、ガス気球での宇宙遊覧フライトの実現を目指し、気球のキャビン内へトヨタ紡織のシートを設置し、飛行試験を実施しました。安全で快適な宇宙遊覧ができる未来が、もうすぐそこまで近づいているといえるかもしれません。

気球にトヨタ紡織のシート設置、飛行試験など

気球にトヨタ紡織のシート設置、飛行試験など
気球にトヨタ紡織のシート設置、飛行試験など

全社的な取り組みへ

トヨタ紡織としてもCVCはまだ始まったばかりの取り組みです。事業化にはいくつかのハードルがありますが、全社の活動として推進していくため、CVCに関わる人材を育成しています。投資担当者は、財務知識や目利きなどのより専門的な知識を身に付け、投資先企業を選定します。また、社内の各部署と定期的な情報交換会を実施し、社内の部署からニーズを吸い上げつつ、CVCからは探索した情報を提供する、など社内連携を進める取り組みを進めていきます。

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