トヨタ紡織のアップサイクル商品「RE:TERRACE」に込められた想い
「リサイクル」ではなく「アップサイクル」
廃棄される製品からまだ活用できる原料や材料を取り出し、一度資源に戻してから再利用する「リサイクル」という言葉はよく使われる言葉となっていますが、環境負荷の低減が意識されているいま、「アップサイクル」という考えが広まってきています。
「アップサイクル」は廃棄される予定の資源をそのまま生かし、付加価値を与えて新たなものへ作り変えることであり、製品から原材料へ戻すエネルギーが必要ないため、「リサイクル」よりも手間が少なく環境への影響も小さくできるため注目されています。
トヨタ紡織がアップサイクルをする意義
自動車部品の生産においては、様々な材料が使われていますが、使われず捨てられてしまう部分も多くあります。そのため廃棄の際にCO2(二酸化炭素)が発生し、結果的に地球環境に影響を与えています。
自動車のシートや内装を手掛けるトヨタ紡織でも、シート製品などを作る際、多くの表皮材を使っており、型抜きした後に残る表皮材や保管期間を過ぎた原反を廃棄しているということが課題となっていました。

このような表皮材の廃棄を減らすため、トヨタ紡織は2022年よりアップサイクル活動の取り組みを始めています。
廃棄原反とは
原反には修理や交換のため一定の保管期間が設けられており、これまでは、決められた保管期間を過ぎると廃棄されていましたが、これらの廃棄原反の有効活用が廃棄量削減に貢献するものと考えています。

トヨタ紡織でシートに使用される代表的な表皮材を3種ご紹介します。
合皮(PU合皮・PVC合皮)

ファブリック

人工スエード

- ※ PU ・・・ 「ポリウレタン Polyurethane」の略
- ※ PVC ・・・ 「ポリ塩化ビニール Polyvinyl Chloride」の略
アップサイクルブランド
「RE:TERRACE(リテラス)」の活動
トヨタ紡織では、廃棄されることになる表皮材を活用したアップサイクルブランド「RE:TERRACE(リテラス)」を2023年に立ち上げ、商標登録しています。

「RE:TERRACE(リテラス)」という名前には、
RE→再度活用する
TERRA(テラ)→ラテン語で地球の意
TERRACE(テラス)→新しいもの・未来を照らす
という言葉を組み合わせており、「新しい価値を見出す・未来に光を当てる」という想いを込めています。
自動車用シートに使われる表皮材を使用するため、高品質(難燃性、耐光性、耐摩耗性)かつ手触りのよい商品へアップサイクルし、各種イベントや自動車販売店の店頭などで販売しています。

これらの表皮をアップサイクルし、商品化するまでには様々な苦労や課題がありました。
もともと、自動車用のシートには汚れや色あせを防止するための機能が求められていますが、その機能性がゆえに印刷がしづらく、いくつも試験が必要になることで手間やコストがかかるなど、越えなければならないハードルがありました。
また、「RE:TERRACE (リテラス)」商品の多くは自社の工場で内製していますが、内製ならではの課題もありました。
トヨタ紡織はシートに関しては高い技術力を持った職人がいますが、「RE:TERRACE(リテラス)」が扱うバッグやクッションといった商品を縫製する経験がなかったため、開発にあたっては工場へ何度も足を運び、縫製の職人とやり取りを重ねて、ようやく世に出せるものが出来上がりました。
これからのアップサイクル活動
トヨタ紡織は2050環境ビジョンの中で、廃棄物ミニマム化を掲げております。
しかしながらアップサイクルでの廃棄物活用量はかなり限定的でまだまだ貢献度は高くありません。そこで各企業・団体とのコラボレーションによる商品化や完成品以外(原反)の商品化も積極的にすすめることとしました。
これからも、トヨタ紡織のアップサイクル活動による「RE:TERRACE(リテラス)」の商品が、できるだけ多くのみなさまの手に届き、地球環境を守る活動の一環となること、そして、「RE:TERRACE(リテラス)」は製作と販売を続け、トヨタグループの一員としてアップサイクル活動の更なる推進を目指していきます。