「解体しやすい構造づくり(易解体構造)」で、持続可能なものづくりへ

自動車リサイクルにおける課題とは

日本では、年間300万台近くの自動車が廃棄されています。現在、廃棄された自動車の約80~90%(総重量比)はリサイクルが進んでいますが、自動車シートをはじめとする自動車内装部品のリサイクルはまだそれほど進んでいません。
リサイクルするには、できるだけ単一材料ごとに分けて回収する必要があります。当社の製品を含む自動車シートは、お客様に安全性と快適性を提供するため、さまざまな材料から構成されています。そのため、廃車時の解体作業に手間が掛かり過ぎたり、そもそも単一材料ごとに効率的に解体できないといった課題があり、リサイクルが進んでいません。サーキュラーエコノミーへの注目が高まる昨今、トヨタ紡織グループが取り組んでいる、自動車シートのリサイクル促進をご紹介します。

解体しやすい構造づくり

自動車シートのリサイクル促進の方法のひとつに、「解体しやすい構造づくり(易解体構造)」というものがあります。
廃車解体は、解体 ➜ プレス ➜ シュレッダー ➜ サーマルリサイクルの流れで行われます。サーマルリサイクルとは、廃棄物を燃やしたときに出る熱エネルギーを回収して利用するリサイクル方法です。
鉄部分はシュレッダーの工程で選別と回収ができるため、容易にリサイクルが可能です。しかし、鉄以外のシート部品は最初の工程で解体することが難しく、ほとんどがサーマルリサイクルに回されてしまうため、リサイクル材の原料として回収することができませんでした。最初の工程でシートが解体されない原因は、解体に時間がかかる組付構造と、簡単に分離できない複合品があることです。そのため、構造と部品から見直す必要があります。

シートの構造図

シートの構造図

シートはカバー、ウレタンPAD、フレーム、樹脂部品という大きく4つの部品で作られています。
異なる部品を確実に固定するためには、それぞれの材料にあった固定方法を使い分ける必要があります。例えば、一般的なボルト締結のほかに、樹脂フックでの固定、サスペンダーと呼ばれるクリップでの固定などです。固定方法が多岐にわたると、解体の工数も増えることから、シートのリサイクルが進まない原因の一つになっています。

シートはカバー、ウレタンPAD、フレーム、樹脂部品という大きく4つの部品で作られています

さらに、上図のような締結部分はシート使用時に外れてしまわないよう、強固に固定されています。このように、分離が難しい部品があることも、シートが解体されないことにつながっています。
トヨタ紡織グループはこの課題を解決するため、現在、固定方法やシートの構造自体の見直しをすることで、解体しやすいシート(=易解体シート)の開発を進めています。

易解体シートの展開を目指して

今後の製品化に向けて、まずはシートの構造の見直しを進め、解体に時間を要する作業の迅速化を目指します。
また、解体しやすいシートづくりのため、自動車部品解体プロセスなどの技術実証に参画しました。そこでは、自動車解体業者様のお困りごとを早い段階からキャッチアップし、解体しやすいシート開発に活かす取り組みを実施しています。これからも、サーキュラーエコノミーに貢献できる製品開発を推進していきます。

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