シートの評価項目が多岐に渡る中で、私たちは「安全性」「強度・耐久性」の性能試験を担っています。私たちにとって品質のよい製品とは「万が一の事態でもお客様の身に悪影響をおよぼさない製品」です。安全性はユーザー目線でジャッジし、迷ったときは「自分の家族がこのケースに遭遇したら?」と考える。万が一、100万が一のレアケースでも、そう考えてダメだと思うものは世に出す前にストップをかけます。
耐久試験は、壊れるまで行います。目標とする耐久性能を満足させるのはもちろんですが、より重視しているのは「その製品が最後にどのような壊れ方をするのか」。万が一壊れたときにも、クルマに乗っているお客様がケガなどしないようになっているか、そこまで確認しています。危険と判断すれば躊躇なく設計からやり直します。
耐久試験には、標準で行う試験とは別に、開発車両ごとに車両のパッケージ、お客様の性別や体格等を想定したあらゆる使われ方、および各国や地域の環境を考慮した試験項目と目標があり、それぞれ想定される以上の厳しい条件で実施しています。これを「いじわる試験」と呼びます。あらゆる環境を想定するため、いじわる試験項目だけで100近くになることもあります。
乗り心地や衝突安全など他機能の試験項目を合わせれば、シート1脚開発するために何百という項目の試験を行い、そのうちの1項目でもクリアできなければ、その製品は世に出しません。クリアするまで他の開発関係者と何度でも議論を交わして作り込みます。それが、私たち実験部署に課せられた使命です。
常日頃「難しいな」と感じるのは、何をもって「よい品質」とするか、その目標設定です。まず、製品の使われ方。お客様はいろんな使い方をされるので、たとえ私たちが考えていた範疇を超えた想定外の使い方でも、お客様の身に悪影響をおよぼさないか。想定外をどこまで想定するべきかが、ほんとうに難しい。次に、お客様の期待を、過剰ではなく適正に満たすこと。コストをかければいくらでもいい製品はできますが、価格が高すぎればお客様にとって負担になってしまう。良品廉価、まさにこれが「よい品質の製品」の条件ではないでしょうか。