企画提案
シート製品企画担当
平野 智一
カーメーカーへの新しいシートの製品企画提案と、社内の開発プロジェクトの推進マネジメントを担当しています。心がけているのは、実際にクルマに乗られるお客様に満足いただけるような品質にするために、積極的に現地へ足を運び、お客様にお会いしてお話を伺うなどエンドユーザーのニーズを直接確かめること。
例えば、南米では驚くほど大量の荷物をクルマに積み込むことが多く、シートには何よりも丈夫であることが求められます。現地に行かなければ、お客様が本当に求める品質は分かりません。お客様のニーズをこの目でしっかり確かめることから製品企画ははじまります。
私たちの部門における「品質」とは、クルマに乗る人、つまり「すべてのお客様に、いかに快適な車室空間を提供できるか」と考えています。一般的なインテリアの椅子と違って、クルマのシートは外観品質だけでなく機能的な品質が問われます。
移動中に、異音や振動がしないか、シートに長時間座っていても疲れにくいか、カーブで重力がかかってもしっかり身体を支えられるか、何度も乗り降りしたときにシワが出ないか。クルマに乗る人が感じ取るすべての点で品質を満足しようという目標を持って、チーム一丸となって取り組んでいます。
魅力ある品質を備えた製品をつくり出すためには、関わるスタッフ全員が100%の力を発揮しなければなりません。みんなのベクトルを同じ方向に合わせるためにリーダーシップをとるのが私の仕事です。設計図面1枚とっても、できあがるまでに100名が関わることも珍しくありません。チーム全員がやるべきことを完遂するためには、各機能を横断したチームワークと信頼関係が必要です。チームワークが製品の品質に直結すると、私は思っています。
お客様から「ありがとう、よかった」というお言葉をいただいたときは、やってよかった!という何にも代えがたい喜びがあります。お客様から合格をいただくことを目指して、これからも品質向上にチャレンジしていきたいですね。
デザイン
内装デザイン担当
Wang Yun
カラーデザイナーとして、車室内のコンセプトやシート、内装カラーのアイデアストーリーやスケッチを担当しています。
アイデアストーリーやスケッチの創出では、お客様の要望を形にするだけでなく、中国地域のトレンドからカラーコンセプトを自ら作り上げ、お客様に満足いただけるようなデザインを目指しています。
例えば、女性向けデザインを企画した際に、日本の女性と中国の女性の好みを調査したところ、日本の女性は「可愛さ」を求める人が多いのに対し、中国の女性が求めるのは「ファッショナブル」、「大人らしさ」と同じ女性でも好みが違うことが分かりました。地域によるこのような好みや考え方の傾向などを取り入れながら、車室内のデザインを考えています。
また、後工程である製造の品質要件も反映させ、つくりやすく不良の出にくい製品になるように心がけています。
自ら提案したデザインの品質を確認する際は、実際にお客様がクルマに乗る状況を現地現物し確認するようにしています。例えば、自然光と室内光では色の見え方や感じ方が変わるため、色の良し悪しを確認する際には特に気を使い、車室内ではどう見えるのかを確認しながら取り組んでいます。
私は自身の経験を通して、国によって、また中国国内でも地域によって好まれるデザインに違いがあることを知りました。お客様に感動いただけるようなデザインを生み出すには、市場トレンドやお客様の好みなどをよく調べ、お客様の目線に立った提案が必要です。車室内のデザインを行うときは、そのことを常に心がけています。
デザインと製品の性能を両立させ、中国地域だけでなく世界中のお客様に共感と感動をもたらす製品を生み出していきたいと思います。
設計
製品開発・プロジェクト管理担当
John Santilli
私は、米州地域の製品開発とプロジェクト管理を担当しています。
お客様に満足いただける製品を届けられるよう、お客様の使い方や使用される環境条件、私たちの工場における製造要因に対して、製品の機能にばらつきが起きにくい設計に努めたモノづくりを心がけています。ばらつきが起きにくい製品はお客様の品質への期待を裏切ることなく、安心してお使いいただけると考えています。
過去の経験で学んだことや、お客様に満足いただける機能を新しい製品の図面に織り込み、計画通り製品開発を進めることが品質確保につながります。最終的なゴールは、自分たちが自信をもってお届けできる製品を世の中に送り出し、お客様に喜んでいただけること。それを実現するために、CAEを用いた解析の活用だけでなく、設計メンバーによる図面の検討やお客様の声を直接聞くなど、製品がお客様の元に届くまで一切妥協せずチーム全体で取り組んでいます。
製品開発では、お客様のニーズに応えるため、製品の使われ方や使用環境など、お客様の目線に立った設計を行っています。そのように開発した製品は、市場価値も高く、いつまでもお客様に求められる存在になります。
品質面では、より良いモノづくりのために、お客様満足度に関する市場調査などの情報も活用します。また、社内の品質保証や製造部門だけでなく、取引のある部品メーカーなどからも過去の設計や品質に関する知見を、広く収集します。
このように、これまで培ってきた知識や経験を新たな設計に生かすことで、高品質なモノづくりと品質不良ゼロの実現につながります。
設計
シリンダーヘッドカバー
設計担当
夏目 千尋
私が設計しているシリンダーヘッドカバーは、簡単に言えばエンジンの「フタ」にあたるもので、これが機能しないとエンジンオイルが漏れたり、クルマの「走る、曲がる、止まる」の重要性能に支障をきたすなど様々な危険が考えられます。絶対に不具合を出すわけにはいきません。製品を設計する上で感じる難しさは、安全性を保ちつつ、お客様の要望にいかに応えていくのか。
エンジンの形やサイズが変われば、シリンダーヘッドカバーの耐熱性や耐久性も変わるので、その都度試験を行う必要があります。また車種によって要求される耐用年数なども変わります。「材料を変えずに耐熱温度を上げたい」「カバーに他の機能をプラスしたい」などお客様の要求品質はどんどん高度になるので悩むこともありますが、そんなときは周りの先輩が助けてくれます。経験豊富な先輩がたくさんいることが、製品の品質につながっていると思います。
海外向け製品の担当になるためには、まずは現地での製品の使われ方を見ることが必要だと思い、自分なりに考えて「タイに1年赴任したい」と手を挙げました。「どんなときに、どんな不具合が出るのか」「エンドユーザーがどんな要望を持っているのか」を知るには、現場を見るしかないと。いざ行ってみたら驚きの連続でした。まさかユーザーがボンネットをあけてエンジンに水をかけるなんて、日本にいたら想像もつかないような使い方でも、タイではよく見る光景。そこまで想定して設計しないと品質を満たせないんだと、はじめて知ることができました。
「まさか」という使われ方までイメージしてお客様の安心を図面に落とし込むのは、難しいですがやりがいがあります。トヨタ紡織の設計には妥協がありません。ベンチマークするとよく分かるのですが、ユーザーには見えないパーツなのに、とてもこだわって丁寧に作られています。そうしたところがお客様や組み付ける人の安心感につながっているのではないでしょうか。これからも、細部までこだわり続けたいです。
試作・評価
シート安全・
強度実験担当
志賀 大輔
シートの評価項目が多岐に渡る中で、私たちは「安全性」「強度・耐久性」の性能試験を担っています。私たちにとって品質のよい製品とは「万が一の事態でもお客様の身に悪影響をおよぼさない製品」です。安全性はユーザー目線でジャッジし、迷ったときは「自分の家族がこのケースに遭遇したら?」と考える。万が一、100万が一のレアケースでも、そう考えてダメだと思うものは世に出す前にストップをかけます。
耐久試験は、壊れるまで行います。目標とする耐久性能を満足させるのはもちろんですが、より重視しているのは「その製品が最後にどのような壊れ方をするのか」。万が一壊れたときにも、クルマに乗っているお客様がケガなどしないようになっているか、そこまで確認しています。危険と判断すれば躊躇なく設計からやり直します。
耐久試験には、標準で行う試験とは別に、開発車両ごとに車両のパッケージ、お客様の性別や体格等を想定したあらゆる使われ方、および各国や地域の環境を考慮した試験項目と目標があり、それぞれ想定される以上の厳しい条件で実施しています。これを「いじわる試験」と呼びます。あらゆる環境を想定するため、いじわる試験項目だけで100近くになることもあります。
乗り心地や衝突安全など他機能の試験項目を合わせれば、シート1脚開発するために何百という項目の試験を行い、そのうちの1項目でもクリアできなければ、その製品は世に出しません。クリアするまで他の開発関係者と何度でも議論を交わして作り込みます。それが、私たち実験部署に課せられた使命です。
常日頃「難しいな」と感じるのは、何をもって「よい品質」とするか、その目標設定です。まず、製品の使われ方。お客様はいろんな使い方をされるので、たとえ私たちが考えていた範疇を超えた想定外の使い方でも、お客様の身に悪影響をおよぼさないか。想定外をどこまで想定するべきかが、ほんとうに難しい。次に、お客様の期待を、過剰ではなく適正に満たすこと。コストをかければいくらでもいい製品はできますが、価格が高すぎればお客様にとって負担になってしまう。良品廉価、まさにこれが「よい品質の製品」の条件ではないでしょうか。
生産準備・製造
生産準備・製造担当
Patanawong Rochanasmita
私は、シートやドアトリムの製造部門の部長として、お客様に満足いただける製品をお届けするために、新しい製品の生産準備や製造工程の管理を行っています。
新しい製品をつくる際には、過去の問題点を洗い出し、対策を考え、再び同じ問題が起きないように製造工程や生産手順を見直しています。また、新しい技術や設備を使うこともあります。そのような時は、その技術を習得し、設備を問題なく使いこなすことができるようになるまで、何度も訓練し、人材育成することを心がけています。
私たちのお客様は、自動車メーカーだけでなく、私たちの製品に座ったり、触ったり、使っていただいている方もお客様です。そのお客様に当社の製品を喜んで使っていただけるよう、生産しています。作業者に変化はないか、図面通りの製品をつくれているか、標準作業が守られているか、良品条件が守られているか。一人ひとりの正しい作業の積み重ねが、品質の良い製品につながります。モノづくりに携わるすべての人が、ひとつになって、品質をつくり上げています。
私たちの使命は、お客様に安全、安心で快適にご使用いただける製品をお届けすることです。その上でまず大切なことは、不良が出にくい設計がされており、しっかりとした生産計画が組まれていることです。そして製造工程内での、異常や変化にいかに早く、適切に対応できるかが重要です。
その実現のために、私たちが特に大切にしていることは、人間関係です。現場での役割や能力、考え方を共有し、改善を続け、お客様から信頼されるモノづくりを追求し続けます。
生産
シートカバー縫製担当
佐野 あきな
シートカバー縫製を担当して17年経ち、現在は班長として生産ライン全体を見て、遅れやトラブルが出ないように手助けやアドバイスをする「リリーフ」という役割についています。
シートのステッチはいちばんお客様の目につくところなため、みんな責任と誇りを持って仕事に取り組んでいます。シワがひとつもない、ビシッとした、美しいシートカバーをお客様にお届けするのが、私たちのプライドです。
複雑で立体的な形のシートカバーを、人の手で縫い上げていく作業なので、手作業ならではの難しさがあります。なんといってもいちばんの大敵はシワです。シートカバーの布にはあらかじめ縫い合わせるポイントが刻んであり、そこに沿って縫っていけば間違いなく仕上げられますが、きれいに仕上げるにはやはり経験が必要です。ほんの1ミリの縫い目のズレが大きな不具合につながることもありますから、表面のステッチを任されるまでには何年もかかります。技術を身につけるためには、練習、練習、練習しかありません。最初は布ではなく紙を縫う練習からはじめ、決まった時間内で品質のよいものを縫えるようになるまで、ひたすら練習します。
チームのメンバーには、「お客様には見えない裏面こそ、きれいに仕上げるように」と指導しています。シートカバー縫製の工程は9割が裏面の縫いで、表面の縫いは1割です。シートとして組み上げたときに、裏面の小さな不具合がシワやゆるみになって表面に響いてしまうので、その大切さをメンバーの一人ひとりに分かってもらうことが品質を上げるためにとても重要です。
品質向上のためには規格や手順そのものを常に見直すこと、そして一人ひとりの能力を上げることが大切です。それぞれの得意なところを見極めて、上司や他のチームの班長と話し合い、担当箇所を決めるのも私の仕事。一つのシートカバーはチームプレーでできあがっていきます。品質はひとりではつくれません。
品質管理
品質管理担当
Gokhan Peker
私は今まで、製品開発から設計、製造、品質に至るまで様々な分野を担当してきました。現在は、ゼネラルマネージャーとして、品質管理部門とエンジニアリング管理部門を担当しています。
当社が常に信頼されるサプライヤーになるには、過去の反省や弱点を把握し、継続的に改善活動を行いながら品質レベルを向上させていくことが大切です。そのためにも、全てのプロセスにおいてお客様第一の考えを浸透させ、チーム全体で品質に取り組むことが必要です。
品質という言葉を聞くと、現場においては「製品の品質」を思い浮かべることが多いです。しかし、製品そのものの品質だけでなく、仕事のプロセスやそれらの管理方法など、業務の進め方による成果についても言えると思います。私は、仕事のやり方や管理方法を標準化し、TQM(総合的品質管理)の心構えを社内に浸透させることで、ばらつきのない製品や業務を達成できると考えています。チーム全体の協調なくして品質は成り立ちません。
自動車部品メーカーである、私たちにとってのお客様は、自動車メーカーでもありますが、その先の実際に自動車を購入される全ての方々がお客様です。その考えを、一緒に働くメンバーや会社全体で共有できるよう、努力しています。また、その考えが次の世代にも引き継がれ、将来活躍する後輩たちに私を超える人材になってもらえるよう、人材育成をすることが私の使命です。
私たちの思いは、お客様第一の考えで、ベストを尽くすことです。
生産
ドアトリム最終検査担当
稲垣 洸哉
ドアトリム*の表面、つまりお客様から見える「意匠面」の検査を担当しています。生産ラインの最後尾で製品にキズや不具合がないかチェックするのが仕事です。経験はまだ1年半ほどですが、お客様に品質の良くない製品を流さない、その責任感は誰にも負けないつもりです。私たちには後工程がありません。「後工程はお客様」を合言葉に、みんながんばっています。
仕事をはじめたばかりの頃は生産ラインのスピードに驚きました。ドアトリム1枚につき、数十秒の間に最終の品質チェックをするのですから、一瞬の勝負です。手順を守って、速く、でも、一つひとつ丁寧に。自分たちにとっては何千枚と出荷する製品でも、クルマを買われるお客様にとっては高価なたった一台です。悪い製品は届けられません。だから、一瞬に思いを込めて見ています。
* ドアの内張りパネル
トヨタ紡織では、品質は検査工程ではなくそれぞれの生産工程で作り込む、一人ひとりが品質保証の主役、と教え込まれました。ですから私が担当する最終検査工程まで届けられる製品に、不具合はまずないんです。ないはずですが、「ある」という前提で目を光らせるのが私たちの役割です。厳しすぎるくらい細かく、妥協は一切しない。判断に迷ったときは遠慮なく不合格にします。異常を感じたら「止める、呼ぶ、待つ」というルールを入社した日から叩き込まれているので、いったん生産ラインを止めて上司を呼び、OKかNGか、チームで基準を合わせます。検査する人によって基準がばらつくことはありません。
ドアトリムの裏面の検査は全車種できるようになりましたが、意匠面の検査はまだ駆け出しです。お客様が普段目にする意匠面は、細かいキズの有無など自分の目が基準になるため、裏面に比べて判断が難しい。もっと訓練して任される車種を増やし、リリーフになれるようにがんばりたいです。